自作キーボードではよくアクリルを用いたサンドイッチ構造がケースに利用されることが多い。
今回、elephant42を作成するにあたり、大学のtrotecのレーザーカッター(trotec speedy 100)を使用した。しかし、パラメータ調整がなかなか苦戦しているので、その記録を残しておく。
初回
出力100%, 速度0.4, 1000Hzで、対象ははざいやで購入したウルトラバイオレット。
結果:非貫通
出力が足りなかったのか、一部分非貫通だった。そのため、再度同じパスでカットした。しかし、それでも不足しているところがあったため、仕方なく手で折って切り取った。以下に手で折った箇所を載せる。
一方で、きれいに切れている箇所もあった。
きれいに切れると、ウルトラバイオレット特有の紫色が映える。
同じようなパス(短い、長い)でも、貫通・非貫通が大きく違っていた。
考察
レーザーカットする台には、ハニカム格子の金属の板を利用したが、これや別の要因によって、レーザーの焦点と対象物の距離が変わってしまっていた可能性が考えられる。また、レーザーの出力に"波"(量子性の話ではない)があり、切れなかった可能性が考えられる。
次回アクション
台の平行を出すのは難しい。そのため、パラメータを変更することで直せる部分で対処する。
周波数を大きくする
公式ページによれば
- 押し出し材のアクリル(XT)のカットには、最大で5,000 Hzの周波数を推奨します。
設備設置場所では、慣例的に1000Hzを使ってきていたため、アクリルカットに対して周波数を大きくするという発想がなかった。最大5000Hz推奨であるため、2000Hz程度から出力調整を行って、最適な値を見つける。ただし、周波数を上げれば当然対象物へ与えるエネルギーが増大する(理論的には$E = h\nu$より、エネルギーは周波数に比例)ため、出力を現在の100%から40%程度に落とした状態で検証する。適切な形で高出力を出すことができれば、多少出力に波があっても、そのゆらぎが影響しない可能性を期待できる。
Zオフセットをいじる
公式ページによれば、
焦点をずらす
6mm以上の材料を均一にカットするには、材料にレーザーを照射する焦点位置をずらします。 参考値としては、材料の厚さの約1/3をずらします。例えば、6mm厚のアクリル板ならZオフセット値(高さ調整)を-2mmにします。
とあり、Zオフセットの値を変更することで、焦点をアクリルの内部にずらすことが推奨されている。今回利用しているアクリルは2mmのため、0.6mm ≒ 1mm程度ずらしてみる。
2回目
キーボードではない、別件でカットしたいものがあったので実施。
材料と方法
アクリルは対象を変えてアクリル板 透明 指定無し(キャスト)板厚(2ミリ)を使用した。
Zオフセットを -1mm (1mmではなく、-1mm), 周波数を3000Hzにして実行した。また、前回の「次回アクション」で述べた、
出力を現在の100%から40%程度に落とした状態で検証
を試してみたが、周波数を3000Hzにしてpower=40%ではまったく切れなかった。そのため、power=100%のまま実施した。
結果と考察
きれい。
これは同じサイズのパーツを切り出したものを束ねたものだが、断面がきれいに出ているのがわかる。触った感触もなめらかで、前回のような非貫通のエリアもまったくなかった。
おそらく周波数をあげたことにより、期待通り出力のゆらぎが減って、非貫通となるケースが減ったのだと思われる。
しかし、両面に貼ってある保護フィルムのうち裏面側が、一部分切りきれていなかったことは特筆に値する。どうやら使用している機材の特性で、台に向かって右側のエリアの出力か焦点が、向かって左側のエリアと比較して劣っているのだと思われる。最初の焦点あわせも実験もすべて左側に合わせて実施しているため、これが効いているのだろう。
ちなみに、あわせて彫刻も行ったので、簡単なメモを。パワーが80, スピードを10、PPIを500にしてAir assistをoff、z-offsetを0にして、passesを2(同じところを2回に分けて焼く)を実施すると、比較的きれいに彫刻できた。trotecのレーザープリンタはラスターデータの色の濃淡によってレーザーの出力を変えている。今回のデータは色がかなり明るい色(ほとんど白や水色など)だったため、このパラメータでちょうどよかったが、データの色が全体的に暗い場合には、パワーを落としたほうがいいとおもわれる。
彫刻において、Air assistは注意して使わないといけないと思ったが、これはまたどこか別の機会で。
次回アクション
周波数をあげると安定して切断できることがわかった。しかし、材料が違い、また、台の位置によって貫通しにくいことがわかった。そのため、
- ウルトラバイオレットでも、周波数を上げることによって安定して貫通させられるか・断面がきれいに出るか検証する。
- 台座の特性を、打ち消す。
- 現在は焦点あわせを左上で実施しているため、ヘッドを台の中央に移動させ、そこで焦点あわせすると結果が変わるか検証する。
- ハード的ではなく、ソフト的に修正できないか検証する。
3回目
TBW: ウルトラバイオレットの再挑戦。